ブラキン小説第140話「エルドリン収穫祭後」
エルドリン収穫祭は、邪教との戦いが一時停戦となったことで近年まれに見るほどの盛況ぶりだった。
それもそのはず、邪教自体の影響力が一時的に低下したため、モンスター達の活動領域も狭まったためだった。それに付け加え、山賊に海賊を退治した結果エルドリンの治安は飛躍的に向上していた。
今まで悩まされていた治安問題も多少の解決を見たことで、人々の出足に影響したようだ。
それに、新国王就任という一大イベントも相まって、久方ぶりの盛況に繋がったとも言える。
ミュリシアは、ティアとランベルク王子の二人が両思いになったことを素直に喜んでいた。フローリス王女が少し邪推をした物のミュリシアからしてみれば、そう思うこと自体がまずない。
惚れてもおかしくないのはミュリシア自身認めるところだが、ティアの存在を知ってしまった以上自分からそう思うことはしないようにするのが性格というか、思いだった。
「ティアが幸せそうでよかった」
「ミュリシア、本当はいいなって思ってたんじゃないの?」
リリアンは、真面目な顔をしてそう言うとミュリシアは素直に頷いた。
「かっこいい王子様だよ。誰にでも話をするし、剣の腕は立つし、それに英雄みたい。だから、かっこいいとは思うし、手助けをしてあげたのも確か。だけど、ティアの思いを知っているからあたしがそう思うのは後出しでしょ?フローリスにも気づかれてたけど、いいんだよ」
「ミュリシアらしいといえばらしいけど、大丈夫〜?」
リリアンとしては、そこが気になったようだった。
ミュリシアはその言葉に首を振った。
「大丈夫じゃなければ、ティアの思いを後押ししないよ。フローリスの思いもティアの思いも、そしてランベルク王子の思いも知っているからあたしはそう動いた。ただそれだけ」
「ミュリシア、たまには泣いても良いんだよ。私じゃちょっと足りないかもだけど・・・」
「ありがとうリリアン。でも、大丈夫。友人達を祝福するのくらいは出来るし、平気。あこがれの人みたいなものだったから・・・」
「もう、ミュリシアはここで泣かないでどこで泣くの?心が辛いままじゃ、笑えないよ・・・。もう、心配させるんだから・・・」
ミュリシアとリリアンだとリリアンの方が若干お姉さんなだけに、年上の対応をする。けれど、その対応もミュリシアにとっては、嬉しいことだった。
「ありがとう、言葉に甘えさせて貰っても良いかな?」
「いいよ、ミュリシアなら」
リリアンの言葉に、ミュリシアは声を殺したまま涙を流していった。
初恋というべきなのか、いろいろと思いが去来する中ミュリシアは、いままでの思いをそのまま涙にして流していく。
リリアンはそんなミュリシアを見つつも、何も言わずに側にいることにした。
(私がミュリシアに出来ることはそんなに多くはないよ。助けて貰ってばかりだから、ちょっとしたお返しだよ〜。なんて軽く言う場面じゃないかなあ)
リリアンとしても、確かにランベルク王子はかっこいいと思っていたからミュリシアの気持ちは分かった。それに、今までのことで心が無理をしていることも。
数分の間そうしていて、ミュリシアは涙を拭いた。
「ありがとう、リリアン」
「お礼を言われることじゃないよ〜。ミュリシアの心が無理をしているのは分かってたし〜」
「ううん、そこまで感づかれてるって思ってなかったから・・・」
「私を助けてくれたのはミュリシアだよ?そのお返し、全然してない。だから、これでほんの少しだけ返せたかな〜?」
「お返しなんて考えなくて良いのに。リリアンが居てくれるだけ、あたしがどれだけ助かってるか・・・」
「あはは、たまには笑い飛ばしておかないと心が辛いよ。涙も流すところで流さないとダメ。でも、ミュリシアの涙は綺麗だった。なんでだろうね?」
ちょっとそのことに首をかしげるリリアンに、ミュシリアは流石に分からない。
「どうしてと言われても、あたしにも分からないよ」
「でも、綺麗だったよ。宝石に例えても良いくらいに」
「もう、リリアンったら。精霊さんの影響なのかな?」
思い当たる節がそのくらいしかない。が、それですら正解かどうか分からないためそれ以上話すのは止めることにした。
推測でしかないし、それにそれが正解だとも言えないからだった。
なにより、ミュリシア自身そこまで考えていないと言うのもあったのだが・・・。
新国王のお披露目も完全に済ませ、祭りも終了した。
となれば、平穏が戻ってくる。
妙な熱気も冷めて、学園も落ち着きを取り戻していた。
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