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このブログについて

アメーバーブログから、移転した小説用ブログです。
ここにおいてあるのはROとブライトキングダムの小説になります。
これから増えるかどうかは不明ですが、よろしくお願いします。
少々詰まってきたりもしてるので、オリジナルのも上げるかもしれません。

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ブラキン小説第143話「エルドリン学園学園祭2」

ブラキン小説第143話「エルドリン学園学園祭2」

収穫祭と分かれたことで人出が心配されたが、予想外にもいつもと変わりがなかった。
それだけ、エルドリンの街になくてはならないものだと言う証明だ。
例年に比べて、準備期間が長かったことと生徒たちも思うところがあったらしく、準備を入念に行っていた。
実際はそれだけではない。なんと収穫祭が新国王のお披露目色が強くなりすぎてしまったことでエルドリン料理祭まで同時開催となっていた。
そうなっては盛り上がるのも仕方がない。

ブラキン小説第142話

ブラキン小説第142話「エルドリン学園祭 学生たちの宴1」

エルドリン学園祭が、収穫祭より後に行われることになった。そのこと自体は初のことであり、人出はいつもより減少することになったがそれでも学生たちには準備期間が長くなったことで、かなり仕上げがうまくいったところが多かったようだ。
結局のところ、武術会は一般の学生たちが取り仕切ることになり、ランベルク王子とフローリス王女はそれの見学をすることにした。
さらに言うとミュリシアとイ・オは特別枠で結局出ることになってしまった。
「うーん、困ったと言えば困ったことになったね」
「でも、先輩方にああいわれてしまってはしょうがないのかもしれません」
実は、二人は出る予定はなかった。固辞するつもりでいたのだが、それじゃあ盛り上がらないと先輩方からいさめされたのだった。
二人とも既に学生のレベルを超えていて、キングゾンビとやり合うほどの腕を持っている剣士は学園中にはなかなかいない。
そして、先輩方から出て欲しいと懇願されては二人の性格からして断りづらいのが正直なところだ。
流石に、使う武器はブロードソードの刃を潰した物と決められたから出ることが出来たと言うのが本音だったりはするのだが、そこの部分は二人の実戦経験が出ている。
元々、学生たちとは違いがありすぎ上に、死線を経験してるため、心構えが違う。そして、授業時は教師を相手にして余裕があるのも二人だけ。
ランベルク王子を除けば例外事項になってしまうのは仕方がないところだ。
二人が出るから、ランベルク王子とフローリス王女は観戦を決めたと言っても過言ではない。
それだけ、二人の剣の腕を良く知っているから観戦する価値があると判断したようだ。
実質、下手な軍の兵士より強いのだからどうしようもないのだが、本人たちはそんなことはお構い無し。
むしろ、今後のことを考えていた。
「うーん、これからどうなるんだろうね?」
「ずっと、ここにいられる訳じゃないからね。それまでは、ここにいるつもりだけどどうなるんだろう?」
ミュリシアとしても、今後のことは見えない。

ブラキン小説第141話

ブラキン小説第141話「エルドリン学園学園祭その1」

エルドリン収穫祭と同じく行われるはずだった学園祭は、邪教の襲撃とその影響で延期になっていた。
学園祭の目玉として、行われるはずだった武術会が、邪教の潜入を許したことでランベルク王子とフローリス王女から延期を言い渡されていたのだ。
本来ならば、収穫祭と同時が本来の所だが邪教の関係上もあり、混乱を避けるため延期という形を取らざるを得なかったのだった。

収穫祭が終わって、二日後仕切り直しと言うことで学園祭の開催が決定した。
学園長が不在の今、決定権を持っているのはランベルク王子だからだ。
実際、開催の延期を決めたのもランベルク王子だった。
それ以前に邪教が潜り込んでいる状況が長く続いたことで、混乱する可能性があったためと思われていたが、理由はランベルク王子の口から語られることはない。
どちらにしても、収穫祭の後となったことで生徒達が収穫祭で遊ぶことに専念できたという側面があった。
ミュリシアからしてみれば、あそこの場で学園祭をやられても困った自体になるだけだと分かっていた。それは当事者だからこそ分かることであり、あの場で学園祭をやらないでほっとした人間でもあった。
いろいろと事情が絡み、学園祭は延期と言うことになっていたのだ。
そして、エルドリン収穫祭を終えてさあ学園祭となったわけなのだが・・・。
かなりの問題が山積みとなっていた。
「そういえば、武道会どうする?」
ランベルク王子はさらっと学園の屋上でミュリシアとイ・オを呼んでそう言ったが、二人ともそれに関してはこりごりしているために首を振った。
「あたしはもうこの前ので懲りたから良いかな」
「先輩に同じくです。古代エルフ剣術は余り人に見せる物じゃありません」
「そう言うと思ったよ。どちらにしろ、学園内じゃミュリシアにしろイ・オにしろ勝てる生徒はいないだろう。それに、俺も差が分かってるからな。ミュリシアとイ・オに出て欲しいと思ってる訳じゃない」
ランベルク王子としてみれば、ミュリシアとイ・オの剣は学園の教師たちすら下手すればしのいでしまうことを気づいていた。
古代エルフと精霊の力を操りし少女。双方共に、普通の人間の能力を遙かに超える力を持っているため、本来の力を出すことが出来る訳じゃない。
そして、その力を秘めているが故に同じ土俵に立てないと言う事情もある。
ミュリシアの精霊剣術、イ・オの古代エルフ剣術は魔力や精霊力を使うものがおおい。それだけに、異質すぎてしまうのだ。
普通の剣ではないため、その力は特筆するべき物であるが一般にひけらかす物でもない。そのことは本人たちがよく知っていた。
「ランベルク王子、あたしの剣は生徒たちと一緒じゃないから無理が出るよ」
ミュリシアの剣、シルヴァンソードは細身ながらも闇の精霊を宿す精霊剣。切れ味は、そんじょそこらの剣を遙かに上回る逸品だけに、下手な剣では太刀打ち出来ない。
さらにイ・オのユグドラシルブレードに至っては世界樹の剣。イ・オの巫女の血筋だけが扱える魔力剣だけに、その強さはシルヴァンソードとは別だが同種の代物。
はっきり言えば、二つそろって普通の出回っている品を遙かに超える品だけに見せるのもひけらかすのもごめんだと言うのが二人にはある。
ランベルク王子も精霊剣となったカシャの剣を早々人前で披露すると言うことはしないからだ。
「どちらにしろ、学園内の生徒たちの祭典だ。ミュリシアやイ・オは一時的にお邪魔する形になってしまうからな。ずっと入られないのは俺も承知している」
「そうですね、どちらにしろ三年間とかは無理です。精霊さんがあたしをどう導くか分かりませんし・・・」
「イ・オは、エセルが望むままで考える。やりたいこと、そんなにある訳じゃない。古代エルフとして、この世界を見るくらいが関の山」
二人の思いを言うとランベルク王子は頷いた。
エルドリンに長くいられないのは王子も似たような物だからだ。
「俺も、この都にいられる時間は後わずかだろう。ウルガに行くつもりがあるからな」
王子は王子なりに、これからのことを考えているようだった。
剣聖の血筋と言うべきか、それともランベルク王子個人の考えかは分からないがミュリシアは、もし王子が旅に出たとしてもまたあうことになるだろうと確信していた。

ブラキン小説第140話

ブラキン小説第140話「エルドリン収穫祭後」

エルドリン収穫祭は、邪教との戦いが一時停戦となったことで近年まれに見るほどの盛況ぶりだった。
それもそのはず、邪教自体の影響力が一時的に低下したため、モンスター達の活動領域も狭まったためだった。それに付け加え、山賊に海賊を退治した結果エルドリンの治安は飛躍的に向上していた。
今まで悩まされていた治安問題も多少の解決を見たことで、人々の出足に影響したようだ。
それに、新国王就任という一大イベントも相まって、久方ぶりの盛況に繋がったとも言える。

ミュリシアは、ティアとランベルク王子の二人が両思いになったことを素直に喜んでいた。フローリス王女が少し邪推をした物のミュリシアからしてみれば、そう思うこと自体がまずない。
惚れてもおかしくないのはミュリシア自身認めるところだが、ティアの存在を知ってしまった以上自分からそう思うことはしないようにするのが性格というか、思いだった。
「ティアが幸せそうでよかった」
「ミュリシア、本当はいいなって思ってたんじゃないの?」
リリアンは、真面目な顔をしてそう言うとミュリシアは素直に頷いた。
「かっこいい王子様だよ。誰にでも話をするし、剣の腕は立つし、それに英雄みたい。だから、かっこいいとは思うし、手助けをしてあげたのも確か。だけど、ティアの思いを知っているからあたしがそう思うのは後出しでしょ?フローリスにも気づかれてたけど、いいんだよ」
「ミュリシアらしいといえばらしいけど、大丈夫〜?」
リリアンとしては、そこが気になったようだった。
ミュリシアはその言葉に首を振った。
「大丈夫じゃなければ、ティアの思いを後押ししないよ。フローリスの思いもティアの思いも、そしてランベルク王子の思いも知っているからあたしはそう動いた。ただそれだけ」
「ミュリシア、たまには泣いても良いんだよ。私じゃちょっと足りないかもだけど・・・」
「ありがとうリリアン。でも、大丈夫。友人達を祝福するのくらいは出来るし、平気。あこがれの人みたいなものだったから・・・」
「もう、ミュリシアはここで泣かないでどこで泣くの?心が辛いままじゃ、笑えないよ・・・。もう、心配させるんだから・・・」
ミュリシアとリリアンだとリリアンの方が若干お姉さんなだけに、年上の対応をする。けれど、その対応もミュリシアにとっては、嬉しいことだった。
「ありがとう、言葉に甘えさせて貰っても良いかな?」
「いいよ、ミュリシアなら」
リリアンの言葉に、ミュリシアは声を殺したまま涙を流していった。
初恋というべきなのか、いろいろと思いが去来する中ミュリシアは、いままでの思いをそのまま涙にして流していく。
リリアンはそんなミュリシアを見つつも、何も言わずに側にいることにした。
(私がミュリシアに出来ることはそんなに多くはないよ。助けて貰ってばかりだから、ちょっとしたお返しだよ〜。なんて軽く言う場面じゃないかなあ)
リリアンとしても、確かにランベルク王子はかっこいいと思っていたからミュリシアの気持ちは分かった。それに、今までのことで心が無理をしていることも。
数分の間そうしていて、ミュリシアは涙を拭いた。
「ありがとう、リリアン」
「お礼を言われることじゃないよ〜。ミュリシアの心が無理をしているのは分かってたし〜」
「ううん、そこまで感づかれてるって思ってなかったから・・・」
「私を助けてくれたのはミュリシアだよ?そのお返し、全然してない。だから、これでほんの少しだけ返せたかな〜?」
「お返しなんて考えなくて良いのに。リリアンが居てくれるだけ、あたしがどれだけ助かってるか・・・」
「あはは、たまには笑い飛ばしておかないと心が辛いよ。涙も流すところで流さないとダメ。でも、ミュリシアの涙は綺麗だった。なんでだろうね?」
ちょっとそのことに首をかしげるリリアンに、ミュシリアは流石に分からない。
「どうしてと言われても、あたしにも分からないよ」
「でも、綺麗だったよ。宝石に例えても良いくらいに」
「もう、リリアンったら。精霊さんの影響なのかな?」
思い当たる節がそのくらいしかない。が、それですら正解かどうか分からないためそれ以上話すのは止めることにした。
推測でしかないし、それにそれが正解だとも言えないからだった。
なにより、ミュリシア自身そこまで考えていないと言うのもあったのだが・・・。

新国王のお披露目も完全に済ませ、祭りも終了した。
となれば、平穏が戻ってくる。
妙な熱気も冷めて、学園も落ち着きを取り戻していた。

追記を表示

ブラキン小説第139話

ブラキン小説第139話「エルドリン王宮舞踏会6 ランベルクとティアの語らい」(2月9日追加分)

ミュリシアがクォバス新国王とフローリス王女のやりとりを見ている頃、ランベルク王子とティアは二人だけの時間を楽しんでいた。
「流石に二人だけは中々無かったからな。ティア緊張してないか?」
「してないわけがないです。今も嘘じゃないかって思うくらい」
「嘘じゃないから、ここにいるんだろう?俺はこの時間を嘘だと思うわけがない」
ランベルク王子はきっぱり言うとティアも頷いた。
「あたしはこの時間が嘘でも、ランベルク王子様を思う気持ちは嘘じゃないからただ思い続けるだけです」
「そういう所は、ティアの凄い所だと思うぞ。真似がしたくても俺には出来ないな」
自分には無いものを素直に褒められるのはランベルク王子の良いところだ。王者に相応しい勇気を持ちつつも王に興味がないあたりがらしいと言えた。
剣聖は、騎士とは違い栄誉を欲しいと思う訳ではない。剣の道をただひたすらに進むだけ。だからこそ、守るべき物が多い王には向かないのだ。
身軽に動ける立場を望むのも、剣に生きるからに他ならないのかもしれない。
「ランベルク様、王になろうとは思わなかったのですか?」
ティアからの問いに、ランベルクは笑って答えた。
「俺が、王になることはない。特に、兄上がいる限りはな。ティアは王妃という立場になってみたいのか?」
「あたしは、ランベルク様のそばにいられるだけで十分です。ただ少し気になって・・・」
「なるほど、ティアなりに気にしていたってことか?なら、考えすぎだ。俺に野心と言う言葉は似合うと思うか?」
その言葉に、ティアは首を振った。
野心があるランベルク王子というのは余り想像がつかない。なにより、妹思いの兄でありティアを差別しない珍しい王族と言えた。
野心を隠せるほど器用ではないのは、ティアじゃなくても分かる。
「もし、ランベルク様が野心を持っていたらあたしは多分惹かれてなかったと思います」
「だと思う。ティアは、邪教の仲間だった時期があるだけにそう言うのは敏感だろう?暗闘と言うべきか、血で血を洗う抗争。熾烈なグループ争いなんかは苦手だと思う」
ランベルク王子の言葉に、ティアは頷く。
邪教の構成員だったとき、仲間たちがその争いに巻き込まれて多数死んだことがある。優秀な構成員だけを残すふるい分けのような物だったが、そのおかげで心を冷たく閉ざしかけたことがあるだけにそのことはどうも心の古傷として残っていた。
「あのときのことは、余り思い出したくないです。心が冷たく凍るよう」
「済まない、思い出させるつもりはなかったんだ」
「大丈夫です。ランベルク様のそばにいる限り、あたしは心を凍らせることはしません。そばにいるだけで心が温かいから凍ることはないです」
ティアはそう言うと笑顔を浮かべた。ランベルク王子は、そんなティアを見てからほほに手を触れた。
その行為に、ティアは拒否することなく触れさせる。
「ランベルク様の手はあたたかいです」
「ティアもな」
そんな二人に、夕暮れの赤い光が差し込む。その姿は、二人だけのもの。その光景をみている人物は存在しない。
少しの間、ほほに手で触れていたランベルク王子だったがふいに手を離した。
「ティア、今後はいろいろと頼む」
「はい、あたしで良ければ」
「だから、良ければって言うな。俺は・・・」
「ごめんなさい。どうも、メイドの立場を考えてしまいます。一生懸命お世話させてください。あたしの幸せなんです」
きっぱり言うティアの言葉に、嬉しそうな表情を浮かべるランベルク王子。二人は、この場で幸せの二文字をかみしめていた。

一方、ミュリシアはそうなっているだろうなと思いつつも顔を突っ込むつもりは毛頭なかった。
「二人が幸せになってくれるといいな」
「何言ってるの?なってくれると良いなじゃなくて、なってくれないとわたくしが困りますわ」
「もう、フローリスはそこだけはせっかちなのかな?」
「お兄様とティアに幸せになってもらわなければ、わたくしが困ってしまいます。あの二人には幸せになってくれないと・・・」
「フローリス」
ミュリシアは、そこまで言われてようやくフローリス王女の気持ちに気づいた。
ランベルク王子にティアは、フローリス王女にとって親しい仲であり、なおかつ幸せになって欲しいと純粋に願う相手でもあったから、その気持ちはそこまで言われないと気づかなかったことがちょっと情けないくらいに強い物だった。
「大丈夫、心配しなくてもあたしも手助けするよ。余り力にはなれないだろうけど」
「何を言っているの?ミュリシアの力はとても強い物なのに」
「あたしの力じゃないから、そう言うの。精霊さんの力、あたしだけが軽々しく扱う物じゃないよ」
ミュリシアとしては、そこだけは譲れない。精霊の力は、とても強い物で一人の人間が軽く判断して使う物じゃないからだ。
毎回そう思うのは、ミュリシア自体精霊さんの力を借りているからにほかなら
「どちらにしろ、あの二人なら問題ないと思うな〜。だって、ランベルク王子がティアさん以外を好きになりそうな要素が見あたらないもの。それに、あの意志の強さだから押し切っちゃうよ」
見るところは見ているリリアンの言葉に、二人は納得してしまった。
確かに、現状のランベルク王子にティア以外の女性が気に入るかと言うとないと言い切れてしまう。それだけ、ランベルク王子の中でティアの割合が多いという証拠でもあった。

ブラキン小説第138話

ブラキン小説第138話「エルドリン王宮舞踏会5」(1月14日追加分)

ランベルク王子が王としての責務を望まないのは、剣聖の血を色濃く受け継いでいることが一番の理由だった。
エルドリン王家の始祖は、数百年前の勇者の一人エルドリンの血を継ぐ若者。その若者からさらに数代たった後に現れたのが、古の剣聖なのだ。
エルドリン王家の生まれながらエルフの血を強く受け継ぎ、手先もとても器用だったと言い伝えられている。事実はどうだったのかは今となっては謎だが、古の剣聖は王家の人間ながらも王家にあまり属することなく、一生を終えているとエルフの古文書には記されていた。
が、属することがない割には王家の至宝として残っているのだから多分都合が悪い部分は削除されていると言うのが本音の所だ。
王家に属することがあまりないならば、至宝としておいておくことはない。それに関するなにかがなければ、そう言うことにはならないはずだからだ。
裏と表が同時に存在するのが現実という物。フローリス王女は、そういう点裏の史実ですら文献を見つけて読みほどいていたりするためある程度のことは知っていた。
「お兄様なら、動きはしないでしょうね」
「ランベルク王子なら王家に収まる器じゃないと思う」
その意見だけはフローリス王女とミュリシアの共通意見だった。
剣聖の血筋は王家に留まらない血筋でもある。それは、剣聖自身が王家のためだけに動いたわけではないことを物語っていた。

新国王就任と同時に王家はまた新しい時代を迎えようとしていた。
それを感じつつも、クォバス新国王はミュリシアを相手に踊りを踊る。
「ぎこちないですけど、何とか踊れてるかな?」
「慣れてないとはいえ、踊るのは何回目だ?」
不意にそう聞かれて、ミュリシアはその答えを言った。
「今回に二度目ですよ。こういう場所は冒険者には似合いませんから」
「そうか?ミュリシアならば、似合いそうな気もするがな?」
クォバス新国王の言葉に、ミュリシアは首を振った。あくまで冒険者としての立場を考えてしまうあたりは頭が硬いというか生真面目というほうが良いのかもしれない。
でも、それは立場をきっちり理解している証でもある。1冒険者が、王家と関わり合いを持つことはあまり良いことではないのを重々承知した上での反応だった。
それを見たフローリス王女は、少しため息をつきつつも新国王を諫めた。
「もう、国王様。口説くにしても、ミュリシアの立場を考えてあげてくださいませ。冒険者と国王では身分の違いがありすぎますわ」
「むっ、口説いていた訳じゃなかったのだが・・・」
「端から見れば、そう見えてもおかしくはないですわ。それに口説くならば急すぎますし、ミュリシアのことも考えてあげてくださいませ」
国王と冒険者の恋愛なんて、この時代あり得ないことの一つになるくらいだ。王家の血が汚れるなどで、重臣たちが騒ぎ出す羽目になるのは言うまでもない。
それでなくても、自分たちが取り入りたくてしょうがないのだ。そこをどこのほねともしらぬ娘に王妃の座をかっさらわれては話にもならない。
権力を握りたくてしょうがない面々にとって、それは許し難いことでもあった。
ようやくランベルク王子がその野心がないということで、国王の座を明け渡したと言うにそこで国王が自分の好きな女性をなんて言い始めよう物なら国が荒れる元になりかねない。
と思うのは、重臣達だけだったりするのはフローリス王女から見て滑稽ではあった。
ランベルク王子の場合、無理ならばその無理を意地でも押し通すだけの力と意志を持っていた。が、クォバス新国王ではそれは許されない。
そして、それにミュリシアを巻き込むことはフローリス王女としてはいたたまれないために、それを抑える役目に入ったのだった。
「国王たる物自由にならない物だな」
「早々自由に動かれては困りますわ。国王というのは見本であり、民のために働く者でしょう?」
「王が自由に動けたら、それはそれで良い国かもしれないけれどよほどしっかりしてないとすぐに崩れそう」
フローリスとしては、国王としての心得を持って欲しいと思うしミュリシアとしてはそれが本心だったりする。どちらにしても二人とも心配しているのは確かだった。
代替わりして直ぐというのはごたごたするのが毎度だ。今回、ランベルク王子が引いたことで収まりを見せていたが、ランベルク王子を信奉する家臣達も少なくない。
王家の火種はまだ残っていると言っても過言ではなく、実際早々収まってくれそうにないのが本音ではあった。
そこまでまだ状況が良くなっていないのが本音だったからだ。
実際就任当日で、いろいろとあったわけでこれ以上起こっても怖いものなしみたいな部分はあったが・・・。
踊りを終えて、ミュリシアはクォバスと離れた。やはり、冒険者という立場がある以上それ以上近づくことはしたくはないようだ。
「あたしにはやっぱりこの場は似合わないかな」
「ミュリシア・・・」
「フローリスが悪い訳じゃないよ、なじみづらいってだけ。お茶とかを飲むだけなら良いんだけどね」
お忍びで来ているとはいえ、王宮の中はどうも息苦しいと思うのは風の精霊と心を交わらせたことがあるだけに、余計にそう思うのかもしれなかった。
フローリス王女としても、王族としては特殊中の特殊。ランベルク王子は王家の異端児と言うことになるのだから、クォバス皇太子以外に国王になるわけがなかった。
家臣達からしてみれば、それを予想していたからこその行動といえた。
王家がまた一つにまとまるにはまだ時間はかかるだろうと思われる。そこまでに、邪教の攻撃は避けられない。そうなってくると、ランベルク王子の力が必要であるのもまた確かなことだった。
国王としての手腕を発揮するまでに、時間がかかる。それまでの間、ミュリシアたちが下支えすることになりそうだった。
軍が弱体化しているため、どうしてもそうせざるをえない。
そういうところはなかなか難しかった。

ブラキン小説第137話

一月ほど、ご無沙汰となりました。なんだかんだで余裕がありませんでしたので追加が遅れました。

ブラキン小説第137話「エルドリン王宮舞踏会4」(11/27 軽く追加)

ティアの片思いの恋が上手く叶ったことで、ミュリシアはほっとした表情を浮かべた。
流石に自分がランベルク王子の恋人では荷が重いと思ったし、相応しくないと思っていたからにほかならない。
「あの表情ならうまくいったよね」
「だと思います。お兄様もティアも思っていたのは分かっていましたわ」
フローリス王女からしてみれば、二人の思いは分かって当然だった。双方の行動を見ていれば、わかりやすい。
だから、二人の思いを応援することにしていた。
一人分かっていないのは新国王のクォバスくらいでほかのみんなは分かっていると言うのも面白い。一人蚊帳の外というよりは、秘密にしなければならないことでもあったからだ。
(しばらく公には出来そうにないね)
(そうですわね、流石にお兄様のファンが大荒れするのは目に見えていますし。難しいところですわ)
二人ともこれからを考えるとちょっと大変かもと思ったが、それでも二人が幸せならば良いと思う所は一緒だった。
一人蚊帳の外のクォバス新国王は、そんな二人を見つつもミュリシアに手を出した。
「こういうときだ、踊って欲しい」
「踊りは下手ですけど、それでも良ければ」
ミュリシアとしては、そこが言える精一杯の所だった。
国王を相手にダンスを踊るというのは、名誉なことではある。が、ミュリシアにはそんな思いはない。それは、異大陸の人間であると言うことと同時に権威に対して、いちいち敬ったり卑屈になったりしないと言うことにつきた。
さらに言えば、この大陸のピラミッドの頂点とも言えるため、そこに上り詰めたい。もしくはその権威にあやかりたいと思う人達に取ってみれば、踊ると言う行為ですら嫉妬の対象になりえると言うことも頭の隅にあるからとも言える。
どちらかと言えば、冒険者というのは無法者に近い存在であるが故にある程度の冒険者としての心得とある程度の決まり事を守ることで自由を保障されている。そう言う点では、王族とは180度違う存在だ。
それだけに、やっかみもまた強いのだ。
「こんなところを家臣達が見たら大騒ぎになりそう」
「出世にしか興味がない家臣達からすれば、一大事だろうが多少の自由くらい無ければ息が詰まってしまう。担ぎ上げた御輿としては軽いかもしれないが、多少のことでガタガタ言われる位で自分の意見を曲げられない」
国王という身になってしまえば、家臣達の意見を入れねばならない部分もかなり出てくる。が、自分で思っていることを口にしないで家臣達の言うことを鵜呑みにすることだけは避けたいと思っているクォバス新国王だった。
そんな姿を見て、フローリス王女としてみればランベルク王子がどうして王に全然興味がないのか分かった気がした。
「やっぱり、お兄様に王は似合わないと思う。器が王としての許容範囲を超えてしまっているのと王という立場が自分の行動をかなり制限してしまうことを知っているからかもしれないわね」
「フローリス、お前王の前でそれを言うのか!?」
「国王様、そこでかりかりしては思うつぼと思うのですけれど?」
さらっとフローリス王女に切り返しを食らったクォバス新国王は呆れた顔をした。
「そこで家臣達のことも考えねばならないのか・・・」
「王というのはそう言う物ではありませんか?」
「まあまあ、二人とも。二人とも正しいってことで良いんじゃないのかな?」
ミュリシアが仲裁すると流石に二人とも黙ってしまった。言いたいことは分かるが、王としてそして王族として言って良いことと悪いこともある。
王という責務は重い物であるし、フローリス王女が言うこともランベルク王子を鑑みれば間違っては居ない。
ランベルク王子はそれだけ器が大きいと言うことの表れであり、王という座はその器よりも小さく見えてしまうのが現状だ。
エルドリン王国で、異質なほどにその存在感は計り知れない物がある。
その点、クォバス皇太子はランベルク王子と比べてしまえば若干落ちてしまうのは、多分教育方法の違いと教師の差があったことに起因しているだろう。
双方ともに、母親は一緒だがランベルク王子は王家に伝わる剣聖の血すらよみがえらせていた。クォバス皇太子は政に関しては強いが、やはり実務となればランベルク王子には及ばない天が出てしまう。
外に出る回数や見識、そして視野の範囲どれをとってもランベルク王子の方が上。それは、クォバス新国王に取ってはマイナスだった。
これから見識を広げようにも王という責務があるだけにおいそれとは出来ない。逆にランベルク王子は王族でありつつも王弟という王よりは身軽な地位にいるだけに、外に出やすかった。
その立場を望むのがランベルク王子が王子たる所以とも言える。ある程度の責務はこなすが、それでもそれ以上の責務を負わないのがスタンスとも言えたからだ。

ブラキン小説第136話

ブラキン小説第136話「エルドリン王宮舞踏会3」(10月13日追記)

ティアとランベルク王子がテラスで二人っきりのダンスを踊っている頃、クォバス新国王とともにフローリス王女とミュリシア達は、中庭に移動していた。
「ここなら大丈夫だろう」
「それにしても、国王様。抜けてきてもよろしかったんですか?」
フローリス王女の言葉に、クォバス新国王は苦笑を浮かべた。
「本来ならば、抜けることはまずいのだがな」
主役が抜けることは、よろしくないのは言うまでもない。が、それでも抜ける必要性があるということであった。
それだけの緊急事態が起きているとはミュリシアには思えなかったが・・・。
「わざわざ出てくるだけのことがあるのかな?」
「気づいてなかったのか、それだけの用事をお前が作っているんだ」
「えっ、あたし?」
ミュリシアとしては、そんな用事を作った覚えはなく。首をかしげるしかなかった。
フローリス王女は何となく思い当たる節があるらしく、苦笑を浮かべていた。
「しばらく、手を借りるつもりですか?国王様」
「流石に察するか」
クォバス新国王としては、ミュリシアの力を借りざるを得ない状況にあるのは確かだった。それだけ、今のエルドリンの状態があまり良くないのは言うまでもない。
「あたしたちの力で良ければいつでもいいですよ。でも、余り借りてばかりだと軍の威信に関わると思います」
「そこが頭の痛いところだな」
実質的にミュリシアたちの力は、下手な軍の兵士よりも強い。だが、その事はかなり軍に警戒心を持たせる事になると言うことは重々承知の上での判断。
そうせざるを得ないほどに軍の弱体化が進んでいる証拠でもあった。
「流石に国王様でもその事に気づきましたか」
フローリス王女としては、気づいていないと思っていた。クォバス新国王も、気づかざるを得なかったが本音なのかも知れない。
そうやって、話をしていると上からランベルク王子の声が聞こえた。
「結局国王様も、ミュリシア達の力を借りなければならないと気づきましたか」
「この状態では借りざるを得ないが本音だろう。ここまで軍が崩壊状態ではどうにもな」
クォバス新国王は、ある程度軍の事を知ってはいたが執務を行い始めてようやく実体に気づいたようだった。
実質はもっと前から気づいていた。もどかしいながらもいろいろと対策を考えていたのだが、それらは国王ではないと言うことでかなり後送りされていたのだ。
が、クォバス皇太子が新しく国王になったことで軍の刷新は急務となっていた。
「しばらくの間、お前達の力を借りたい。エルドリンにいる間はな」
「軍の刷新、そんなに早めに終わりますか?」
「半年では確実とは言えない。が、それ以上力を借りているわけにもいかないのだ」
クォバス新国王としての苦労がそこに現れていた。
その言葉を聞いていたかのように、上のテラスから声が聞こえた。
「結局ミュリシアたちの力を借りなければ、この国は成り立たない」
そう言ったのは言うまでもなくランベルク王子で、そのとなりにはティアが居た。
その様子を見て、ミュリシアはうまくいったのだと察して笑みを浮かべた。
「二人ともおめでとうかな?」
「今はその言葉、取っておいてくれるか。まだ言える状況じゃないからな」
「分かってます。一応、言える時に言っておかないと言い忘れそうで、今言わせて貰いました」
ミュリシアとしてもランベルク王子の立場を知っているから、今じゃなければ多分しばらく言うことすら出来ないだろうと言うのを察していた。
「お兄様、良かったですわね」
「フローリスとしては少し肩の荷が下りたか?」
「そうですね、少しだけですけど楽になりました」
フローリス王女としてみれば、ずっと王族と認められない中優しくしてくれたランベルク王子と親友とも言えるティアが幸せになってくれればと常々思っていたから、素直にそう言っていた。
知らぬは新国王だけで・・・。
「ランベルクに良いことでもあったのか?」
「まあな・・・」
「良いことですよ」
「事情を知らない新国王様に察してくださいとは言いません」
フローリス王女もミュリシアも事情を知らないクォバス新国王にランベルク王子の身分違いの恋を応援できるだけの余裕がないことを見抜いていた。
それ以前に身分違いすぎて、もめる元になることを既に見抜いていたからそこはごまかすことにしたのだった。
ランベルク王子は王家の人間でありながら、王家という枠に捕らわれない広い視野を持った人だから王家という肩書きを軽く超えていってしまう。
フローリス王女も人間ではないという側面から、王家に縛られないだけの知識を持っている。そんな二人が居るだけに、王家としてはクォバス皇太子に帝王学を仕込んだんだろう。
長男という面もあるが、それにしたところで王家相続争いとなれば邪教につけいる隙を与えることになると前の国王は踏んだのかもしれない。
実際、その話が出ないわけではなかったがランベルク王子からしてみれば、王という立場に魅力を感じるわけもない。剣の道を進むことを決めている彼に取っては、王という立場は動きを制限するだけのものにしか見えないからだ。
「どちらにしても、ミュリシア達の力は借りる羽目にならざるを得ないんだ。国王様もそこは認めるしかないってところですか?」
「ああ、確かに認めるしかない。今の軍の状態は最悪だ。ランベルクが直接率いるエルドリン治安部隊以外の規律の乱れや練度の低さは目にあまりある」
クォバス新国王としても、書類等で精査をしていただけで実際に見たりしていなかっただけに実際見たときの落差は計り知れなかったようだ。

ブラキン小説第135話

ブラキン小説第135話「エルドリン王家舞踏会2」(9/15追記)

ミュリシアの勧めに、ティアは困惑した表情を浮かべていた。
これ以上近づいたら、自分の思いを告げてしまうかもしれない。それはランベルク王子に取って良いこととは思えなかった。
それだから、メイドという立場で好きな人のお世話が出来るだけで十分だと思っていた。邪教の元アサシンとしての過去を持つことを考えれば、それ以上を望むつもりはない。
が、こう言われてしまうと揺れてしまうのが人の心の良いところでもあり悪いところでもある。
だが、ミュリシアは分かっていた。ティアの勇気がここで必要なのだと、そしてランベルク王子もその勇気を欲していることをだ。
「たまには自分の心に素直になっても良いんじゃないかな?」
「ミュリシア、あたしの思いは・・・」
「うん、分かってる。でも、フローリス王女もその思いに気づいているのは分かってるよね?」
ミュリシアの言葉に、ティアは頷くしかない。
フローリス王女は、ティアの思いに気づきつつも側に置いてくれている。そして、その思いを応援してくれている唯一の人物でもあった。
「フローリス王女、あたしは」
「気持ちは分かっているわ。だけど、言わなければ伝わらないこともあるのは分かっておいて欲しい」
「あたしの想いを口にして良いのですか?」
ティアはその言葉だけを口にしたのは、当然のことだった。
身分の違いもさることながら過去のことなどいろいろとあったからだ。それを含めて口にして良いのかと聞いていた。
が、フローリス王女はその言葉に頷いていた。
「人としての思いだから、むしろ口にするべきなんじゃないのかしら?ティア、ここががんばりどころよ」
そう言われてしまっては、ティアとしてはこの仲間達の中で言うべきことを言うしかない。
凄く勇気を必要とするけれど、見守られているからもあって気恥ずかしさを感じるのは仕方がなかった。
ランベルク王子はそんなティアを見ていて、苦笑を浮かべてから口を開いた。
「まったく、フローリスもミュリシアもティアにけしかけすぎじゃないか?」
「うーん、どうだろう?ティアに勇気を出して欲しいのは確かかな」
「わたくしとしては、ティアとお兄様の気持ちを知っていますから後押しをして差し上げたいだけですわ」
二人ともしれっと言うと苦笑したままで、ティアの側に寄っていった。
「ティア、不器用な俺だが一緒に踊ってくれるか?」
「えっ、あ、あたしでいいんですか?」
先に言おうと思っていた矢先に、ランベルク王子に言われてしまったため少し間が空いてしまったけれど笑顔で頷いてから。
「はい、あたしで良ければ」
ティアの精一杯の笑顔がそこにはあった。

それを見つつも、ミュリシアたちとフローリス王女はテラスを後にした。
これ以上居るのは無粋すぎるからというのと、ここから先は二人っきりの方が良いことをよく分かっていたからだ。
「うまくいくかな?」
「二人とも気持ちは通じ合ってるから大丈夫。ミュリシアは大丈夫?お兄様のこと」
「知り合って間もないから大丈夫というか、王子様だからそう言う気持ちは抱けないよ。ティアさんのことも知ってるから尚更」
ミュリシアの言葉にあまり感情はこもっているようにはフローリス王女には聞こえなかった。
そんな想いすらも抱いてなかったという証明のように、淡々と言っているように聞こえるのは少し悲しい感じがした。
「ミュリシア・・・」
「フローリス、あたしはあまり前には出られない。ティアじゃないけれど、力が強すぎることがどうも頭にあるからかな」
ミュリシアはそう言う部分一歩引いて見ているだけに、フローリス王女は少し悲しい気持ちを感じざるを得なかった。
「ミュリシア、貴女もいずれは幸せにならなければいけない」
「フローリス、その言葉そのままそっくり返すよ。いつか、幸せになって長命なら尚更だよ」
そう言ったところで、リリアンが口を挟んだ。
「あまり心配しない方が良いんじゃない?ミュリシアもフローリス王女もね〜。で、これからどうするの?」
「この状態じゃ、どうしようもないわ。わたくしの部屋に待避しましょうか?」
フローリス王女がそう言うと、その後ろから一人クォバス新国王がやってきた。
「なんだ、ミュリシア達はランベルクと一緒だったのか」
「国王様」
「ふっ、この場で国王はよせ。流石に、居心地が悪すぎるから抜けてきた。ランベルクが政に携わらない理由を少しだけ理解した気がするな。ここまでいろいろと言われては正直耐えられん」
国王になったクォバス皇太子は、それでもミュリシアからの影響を受けたままだった。前なら、こんな砕けた言葉を言うこともなかっただろう。
国王になっても、その影響が抜けていないと言うことはこれが本来の姿なのかもしれない。

テラスでは、ランベルク王子とティアの二人だけのダンスが続いていた。
「ランベルク王子様、踊る相手あたしで」
「それ以上は言うな。ティア、お前だから誘ったじゃダメか?」
「いいえ、そんな。でも、ミュリシアさんたちも居たのに」
ティアとしては、そこのあたりが気になっていたようだ。
そんな様子に、ランベルク王子は少し笑みを浮かべてから言った。
「ミュリシアもティアのことを後押ししたかったんだろう。まったく、フローリスもミュリシアもお節介焼きなんだよな」
ランベルク王子としては、二人の気持ちは分かっていた。ちょっとフローリス王女がミュリシアの気持ちに勘違いをしてるようだとは思ってはいたが・・・。
「ここまでお膳立てされちゃあな」
「えっ?」
「ティア、これからも俺の側にいてくれるか?」
「そ、それって・・・」
ティアはランベルク王子の言葉にとまどいの声を上げると、ランベルク王子は少し困った顔をしてから言い切った。
「ティア、お前に側にいて欲しい。ダメか?」
「い、いえ。あたしで良ければ」
「はぁ、断られるかと思ったけどセーフだったな」
ランベルク王子が思わず漏らしたとき、ティアが笑顔を浮かべつつも涙を浮かべていることに気づいた。
「お、おいティア。何で泣いてるんだ?」
「まさかランベルク王子様から言われるなんて、夢にも思って無くて嬉しくて・・・。こんな境遇のあたしで良いんだって思ったら涙が自然に出てきちゃいました」
「うれし涙なら良いんだけどな」
理由を聞いて、ほっとしたランベルク王子にティアは笑みを浮かべつつも呟いていた。
「ありがとう、ランベルク王子様。あたしの心はあなたとともに」
「ティア、王子様は流石に辞めないか?」
「それは無理です。身分差がありすぎる恋ですから、それに呼び捨てにするのは流石に恐れ多くて」
ティアからしてみるとそこは流石に譲れないところだった。でも、それだとしても譲るべきところがあるのは分かっていた。
「二人っきりの時だけ様を外します。今はそれが精一杯です」
「わがまま言って済まないなティア」
「いいえ、あたしを好きだって言ってくれるだけで嬉しすぎて天に昇るようです」
ティアとしては、未だにちょっと実感がわいていなかったが涙がその証明となっていた。流れた涙が幸せの証。
二人、この夜のダンスを忘れることは生涯無かったと後に書かれるエルドリン王家英雄書に記載されていた。

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Author:風宮綾乃
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